
電車やバス、街中などで、白い杖を持った人を見かけたことがありますか。
その白い杖の正式名称は「白杖(はくじょう)」といいます。
今回は白杖とその歴史について紹介したいと思います。

白杖は、目が見えない・目が見えにくい状態の方の使う杖です。
白杖の使用は、道路交通法で義務付けられています。
全盲ではなくとも、よく見えない状態で
車が行き交う道や段差の多い街中を歩くのは大変なこと。
白杖は目が不自由な人を危険から守ってくれる存在なのです。
白杖には、大きく分けていくつかの役割があります。
まず一つ目は、周囲の状況を知るための道具であること。
足元の段差や路面の変化、障害物の有無などを先に察知し、安全に歩くための情報を得る役割を担っています。
二つ目は、身体を支えるための補助具としての役割です。
歩行時のバランスを保ち、転倒などのリスクを減らすことで、使用者の安全を守ります。
そしてもう一つ、非常に重要なのが「視覚に障がいがあることを周囲に伝えるサイン」としての役割です。
白杖を持って歩くことで、周囲の人に配慮を促し、社会全体で安全な歩行を支えるためのシンボルとしての意味を持っています。

白杖の歴史をたどると、その始まりは20世紀初頭にさかのぼります。
第一次世界大戦の頃、フランスで視覚障がい者のために白く塗られた杖が考案され、これをきっかけに「白い杖」が歩行補助具として注目されるようになりました。
当初は国や地域ごとに形や色はさまざまでしたが、視覚障がい者が杖を使って歩行を補助するという考え方は、各国で共通して見られます。
その後、この取り組みはヨーロッパから北米へと広がり、1920年代には国際的な支援の動きが活発になります。
1925年には、ヘレン・ケラー女史の呼びかけを契機に、視覚障がい者福祉への関心が世界的に高まりました。
1930年代に入ると、アメリカやカナダをはじめとする国々で、白杖を視覚障がい者の歩行補助具として位置づける動きが制度としても整えられていきます。
こうした流れの中で、白杖は「安全に歩くための道具」であると同時に、「社会に理解を求めるための象徴」として確立されていきました。
現在私たちが目にする白杖は、こうした長い歴史と、多くの人の思いの積み重ねによって形づくられたものなのです。
シナノでは、視覚障がい者の方が使用する白杖そのものは製造していません。
ただし、オリジナルデザインとして「白色の杖」を製作することは可能です。
その場合の杖は、周囲の状況を探るための白杖ではなく、歩行時に身体を支えることを目的とした歩行補助つえとなります。
役割や使い方は白杖とは異なりますが、歩行の安全を支える道具として、利用される方の体格や使用環境に合わせた設計・デザインをご提案することができます。
白色という色が持つ視認性や印象に配慮しながら、日常の歩行を安心して支える一本として、用途に応じたものづくりを行っています。
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