シナノは、日本にスキーが伝わってきた1911年から約8年後の1919年から
スキーポールを製造・販売しており、そこで培った“ポール加工技術”を活かし、
現在では、スキーポール・トレッキングポール・杖・ウォーキングポール・キャンプ用品と様々な“ポール”を作っています。
そのため、細長い棒を加工するのはとても得意で、
それぞれ、強度や軽さ、使いやすさ、デザイン、等、こだわりを詰め込んだ商品を作っています。
ただ、どれも“細長い棒”という点では、一見同じポールのように見えるため、
初めて商品に触れる方は、
どれがスキーポールで、トレッキングポールで・・・とわかりづらいかもしれません。
お電話やメールでも、
ウォーキングポールとトレッキングポールは兼用していいの?
山登りにウォーキングポールで行っていいの?
先ゴムを変えれば、トレッキングポールを街歩きで使ってもいいの?
といった、ご質問をいただくことが多々あります。
今回は、その中でも特にご質問が多い、
「ウォーキングポールとトレッキングポールの兼用」についてお話させていただきます。
ズバリ、結論を先にお伝えすると、
ウォーキングポールとトレッキングポールはそれぞれ目的に合わせた、
商品仕様・強度試験(耐荷重や引っ張り強度等)を行った上、製品として販売しているため、
兼用はおすすめしません。(その他、スキーポール・杖・キャンプ用品も同様)
それぞれ、ご自身の目的に合った正しいポールをご使用ください。
仮に、本来の商品の使用目的とは違う目的でご使用されていた時に、
製品に欠陥があった場合、“使用目的が間違っていた”として修理や交換の補償ができなくなってしまいます。
ウォーキングポールとトレッキングポールも、
歩行をサポートするという点のみでは同じなので、兼用できないことはないですが、
メーカーとしては、上記の理由があり、兼用はおすすめしていません。
<目的>
●ウォーキングポール
→ポールを持たない通常ウォーキングの運動効率をUPさせながら、
背筋が伸びた正しい歩行姿勢で、リラックスしながら歩くために使う。
(この歩き方をポールウォーキングと言います)
●トレッキングポール
→起伏のある山道やハイキングコースを歩く際に、
身体の負担や疲労を和らげ、効率よく安全に楽しむために使う。
<商品仕様>
ウォーキングポールとトレッキングポールも、商品の仕様は似ていて、
構成されているパーツの種類はほとんど同じです。
ついているパーツ
⇒グリップ・ストラップ・ポール(本体)・長さ調整パーツ・先ゴム
↑ ウォーキングポール ↑ トレッキングポール
※トレッキングポールの場合は、上記パーツに「バスケット」が付きます。
バスケット:地面に突いたときに、深く沈みこまないようにしたり、
岩の隙間に入り込まないようにするためのパーツ
ただ、ついているパーツが似ていても、それぞれの持つ役割と目的が違います。
特に、ストラップの持つ役割は、怪我の発生を予防する役目があるので、
下記にて写真付きでご説明いたします。
●ウォーキングポール ●トレッキングポール
ウォーキングポールのストラップは、グリップの上部と下部の2か所で固定しているのに対し、
トレッキングポールのストラップは、グリップの上部1か所のみで固定しています。
理由は、
ウォーキングポールとトレッキングポールのそれぞれの使用目的にあります。
ウォーキングポールを使って歩く「ポールウォーキング」は、
上記でお伝えしたように「背筋が伸びた正しい歩行姿勢で、リラックスしながら歩く」ことが目的なので、
ストラップがついているグリップは、軽~い力で握ります。
この時、軽~い力で握っていても、手とグリップが離れていかないように、
ストラップで手とグリップをある程度固定させる必要があり、
上部・下部の2か所でストラップを固定しています。
一方、トレッキングポールは、
登山中の「身体の負担や疲労を和らげ、効率よく安全に楽しむために使う」ことが目的です。
この目的に対し、ストラップは大きな役割を持っていて、
「身体の負担や疲労を和らげる」ことに関しては、
ストラップに手の甲を沿わせつつ、手にかかる荷重をストラップに分散させるようグリップを握ると、
握力や腕の力の消耗を抑えられます。
このようなシーンで、
ストラップが下部にも固定されていると、ストラップに頼り辛くなったり、
手首に負担がかかりすぎてしまう可能性があります。
そのため、トレッキングポールは上部1か所のみでストラップを固定しています。
軽い登山から縦走登山まで、登山の強度はさまざまですが、
少しでも疲労を軽減できた方が、翌日の疲れが違いますので、うまくストラップを活用してみてくださいね。
「効率よく安全に楽しむ」に関しても、
上部1か所のみでストラップを固定にしている理由があります!
登山道は、街中を歩くポールウォーキングと違い、傾斜やガタツキのある登山道を歩きます。
出来る限り転ばないで行って帰ってこれるのが理想ですが、
登山中に絶対に転ばないなんてことはあり得ませんので、その時はうまく受け身を取ることが大切です。
受け身の取り方は、上手い転び方や歩き方に繋がってくるため、
今回は割愛しますが、転倒した際に、手が自由になっている方が、安全な体勢を取ることができます。
例えば、頭を抱えたり、両腕をクロスして身を守る体勢を取ったり・・・
ただ、転倒は突然起こりますので、咄嗟の体勢判断は難しいかもしれません。
仮に下記の写真のように、前方に転倒した時は、
両手がパッと前に出て、手の平で地面を突くような姿勢になるかと思います。
(※手の平を突くと手首を骨折してしまう恐れもあるので、ご注意ください。
写真はあくまでも一例で、正しい転び方は他の専門ページよりご確認ください。)
この時、
・手とポールが離れていること
・両手の平が地面にしっかりつけていること
これがトレッキングポールとウォーキングポールの違いで、重要なポイントとなります。
ウォーキングポール(ストラップが上部・下部2か所で固定されているポール)を登山で使用していて、
同じように、前方に転倒しそうになった時は、
パッと手が出た時に、地面と手の間にグリップが入り込んでしまい、
上手く地面に手を突けずに、手首を捻ったり、骨折してしまうかもしれません。
・手が離れず内側を向いている×
・手首の捻り、手首への過負担となる×
痛みを抱えたまま下山するのも大変ですし、
もしかしたらご自身だけでは下山できなくなってしまうかもしれません。
トレッキングポールのように、手がポールと離れ、自由になっていると、
様々な受け身の体勢をとることもできるため、怪我の有無・重症度も変わってきます。
ご自身を守るためにも、やはり登山にはトレッキングポールを選択することをおすすめします。
他にも、商品の仕様としては、
グリップ・ポール(本体)・長さ調整パーツ・先ゴムの違いがありますが、
これらの違いによって怪我をしてしまう可能性は低いため、
今回、ご紹介はしませんが、ご不明点がございましたら、シナノまでお気軽にお問合せください。
ウォーキングポールもトレッキングポールも
どちらも歩行のサポートという点では同じですが、
それぞれ目的に応じた仕様で製品を作っております。
お客様が楽しみたいコトに合わせて、商品をご検討いただければ幸いです(^-^)